香川県において、「演劇」はかぎられた一部の人たちに親しまれているものにすぎず、多くの人にとっては「無縁なもの」になっています。けれども、演劇は本当に無縁なものなのでしょうか? 演劇は本来、音楽をきいたり演奏したり、絵を描いたり、スポーツを楽しんだりすることと同じくらい、気軽に楽しめるものです。
ただ、日常生活のなかで、演劇にふれる機会がすくなく、魅力をじゅうぶんに知ることができずにいるため、身近なものと感じられずにいるのではないでしょうか。
そこで、シアター・プロジェクト香川2003では、演劇をより身近にとらえることを目的として、「さぬきシェイクスピア」を企画しました。素材はだれもが知っている「ロミオとジュリエット」。構成・演出に劇団「山の手事情社」主宰の安田雅弘氏を迎え、出演者・スタッフを一般から募って上演するというものです。演劇に今まで関わったことのない人も多く参加していますが、演劇をすることは、決して特殊なことではないんだ、と自分自身で感じて欲しいのです。
さらに、「ロミオとジュリエット」にえがかれた「恋愛」「友情」「家族」といった人類普遍のテーマについて思いを致すことができればと考えています。同時に、私たちの暮らす「さぬき」とは何なのか、それを考えていく公演になればと願っています。
公演には、総勢60名以上の市民が参加しています。あなたの家族を、知人を、どうぞ観に来てください。「何がそんなにおもしろいんだ。ひとつ観てやろうじゃないか」と覗きに来て頂きたいのです。劇場へ足を運ぶことはけして敷居の高いことではない、ということを観る人に感じ取って頂くのも、さぬきシェイクスピアの大きな目的の一つなのです。
この企画を通して、演劇の楽しさ、面白さを多くの人に実感していただきたいと思います。
−シアター・プロジェクト香川2003実行委員会−
安田雅弘(山の手事情社主宰・演出家)
1962年東京都生まれ。演出家。早稲田大学卒業。
早大演劇研究会をへて、劇団山の手事情社を結成し、現代演劇の様式化に取り組む。劇団活動以外にも、委嘱公演の演出、コンクール審査員など多数。雑誌連載なども多く、新刊に「ハッピーなからだ」(洋泉社)。
舞台芸術財団演劇人会議評議員。桐朋学園大学講師、桜美林大学講師、新潟大学講師。
香川県では、'84年、'88年、'02年高等学校演劇四国大会審査員、'01年よりシアターワークショップの講師をつとめる。
http://www.yamanote-j.org/
■さぬきシェイクスピアについて
さぬきシェイクスピアとは、讃岐弁でシェイクスピアをやることではありません。もちろん、舞台にうどんが登場することでもありません。
参加者の大半が暮らす、ここ「さぬき」の地で、シェイクスピアを上演することです。
現在多くの人にとって、劇場へ足を運びお芝居を見ることは、なじみの薄い楽しみになっています。ましてキャストやスタッフとして舞台づくりにかかわることなど、ほとんどないといっていいでしょう。しかし、舞台は魅力に満ちています。そして、能や歌舞伎の存在が雄弁にものがたるように、日本人は世界でも珍しく、その楽しみをよく知り、味わってきた民族なのです。
さぬきシェイクスピアの試みは、そうした舞台の魅力を少しでも多くの方に味わっていただこうというものです。すぐれた戯曲に触れること、ふだんの自分とは違った人間を演じること、そして日常とは違った世界を作り、それをいろいろな方々に見ていただく。そうした作業を通して、自分とは何か、生活する社会とは何か、私たちを取りまく世界とは何かを、あらためて問い直すことができたら、とてもステキだと考えています。
むずかしいことは、必要ありません。お芝居って楽しい、それでいいのです。
「さぬき」が演劇活動を通じて、より心の豊かになる地域になればいいと願っています。
私たちはまず、シェイクスピアからとりかかることにしました。知名度の高さ、スケールの大きさ、登場人物のキャラクターの豊富さ、さまざまな上演にこたえてきた普遍性、そして何より、幅広い年齢や多岐にわたる職業の人たちが参加しやすく、理解しやすいだろうと考えたからです。
さぬきシェイクスピアは、この地を現代日本演劇の先端的な地域にしていこうとする決意表明です。
今年の6月に説明会を開き、7月から稽古がはじまりました。予想をうわまわる反応の大きさと、参加希望者の多さにとまどいを抱きながら、「ロミオとジュリエット」は鋭意製作中です。
始動したさぬきシェイクスピアにどうぞご期待ください。こころよりご来場をお待ちしております。
−安田雅弘−
舞台は、中世イタリアの都市・ヴェローナ。対立しあう、二つの名家、モンタギューとキャピュレット。
モンタギューのひとり息子・ロミオは、想いを寄せていた女性に会うため、友人らとキャピュレット家の舞踏会にしのびこむ。ところがロミオはキャピュレットのひとり娘・ジュリエットに一目で恋に落ち、その夜のうちに結婚の約束をする。
翌日ロレンス神父の取りはからいで二人は秘密の結婚式を挙げる。しかし、親友マーキューシオを殺されたことで、逆上したロミオは、その犯人であるジュリエットの従兄・ティボルトを殺してしまい、ヴェローナを追放になる。ショックを受けるジュリエットのもとに、パリス伯爵との縁談が持ちあがる。絶望した二人をすくおうと、ロレンス神父は一計を案じるが…。