演劇とは劇場体験にほかならない。劇場体験とは、つくり手(演出家および劇作家)の持つ抽象的なイメージを生理的に体感することである。その体験のために演劇すべての要素(テキスト・俳優・美術・照明・音楽・衣裳)は奉仕すべきである。この理念に基づき、山の手事情社は〈演劇の現代詩〉とも形容される独自の舞台作品を発表し続けている。
1984年4月、安田雅弘・池田成志・柳岡香里らのメンバーにより早稲田大学演劇研究会を母体に結成。同会は多くの有名劇団を輩出しており、山の手事情社は、第三舞台・遊◎機械/全自動シアターなどの後輩劇団にあたる。結成当初より都会的なセンスとスピーディなギャグとが評価され、'80年代のいわゆる〈小劇場ブーム〉にも乗って人気劇団となる。
1989年『ゆるやかなトンビリラロの身だしなみ』(下北沢本多劇場)より、参加メンバーの提案と討議を最大限に重視する〈集団創作〉を開始。先鋭的な表現手法の実験をさまざまに重ね、1997年『リビング』(青山円形劇場)からは、現代日本人の精神性を、矛盾をかかえた身体・制限された動き=〈型〉によって表現することを試みている。山の手事情社は若い世代を代表する前衛舞台芸術のカンパニーとして広く知られている。1993年12月、有限会社アップタウンプロダクション(代表取締役=安田雅弘)として法人化、劇団運営にあたっている。